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長島有里枝 「NOT SIX」

思わず、息が止まった。
ノドがカラカラになる。

徒歩1分のヴィレヴァン(ヴィレッジヴァンガード:通称ヴィレバン)で
立ち読みしながら
思わず、息が止まる。
一回、本を閉じて深呼吸するも、
目が離せなくてもう一度ページをめくる。

そこには彼がいた。
わたしたちがまだ仲良しだった頃の
そんな彼だ。

世界に3人似ているひとがいるというが
本当に
本当によく似ている。
表情も、たたずまいも、体つきも、朝の寝癖も、
眼鏡も、寝顔も、
すべてが
本当によく似ているのだ。
とても
とても
よく似ている。

長島有里枝 「NOT SIX」

写真家である彼女の旦那さんが
「彼に似ているな〜」と
前の写真集でみかけてから
なんとなく、ずっと思っていた。

今回の写真集はその旦那さんだけを
とり続けた彼女の視線であり、
生活であり、愛である。
哀しさであり、せつない気持ちであり、
慈しみであり、想い出である。
わたしが望んでも
手に入れられなかった
彼らのいとしい日常。

欲しくてしかたがなかったけれど、
彼のことはもう過去の日の出来事として
処理しなければ
わたしはこの3年のまま
壊れっぱなしになってしまうので
ここは建設的な行動をしなきゃ
「しなきゃ」と
そっと本を置き、
そそくさと部屋に帰る。

テレビは愛知万博開幕を告げ、
春なのに小雪が舞い、
オレンジの夕日が
グレーの厚い雲を
不思議な色に変える。
風が
とてもつよい。

部屋に帰っても
やっぱり
あの本が
気になってしかたがないので

夕方のお散歩ついでに
買いにでかける。
花粉症が本当にひどくて
まつげが目に入ってしまうので
明日は
まつげパーマをかけにいこう。

最近、12年来の親友が結婚をして
新婚旅行にドイツへ旅立った。
殊に、結婚ラッシュがピークに達しようとしている。

仕事とは、結婚とは、家族とは、愛とは、未来とは

と世の中はどんどん質問をなげかけてくる。
そんな年齢になってしまったらしい。
花粉症で
鼻をかみすぎ、
目が腫れて
薬でぼんやりしてて
世界がぼぅ〜としている。
だけどやるべきことは山積みで
逃げても逃げても追いかけてくる。

結婚した親友は
「あとやり残したことは子供を産むことだけ」と
きっぱり言った。
「やり残したこと」なんて
あまりにも多すぎて
もう時間が足りなくなってきたよ。

人間のメスは大変だ。
風当たりも強い。

風が
今日も
いつのまにか
よるをつれてきた。
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by 1egg2min | 2005-03-25 18:03 | BOOKS

人生で最高点の焼き肉とプリン

パパは肉が食べられない。

牛も、ブタも、鶏も。
牛乳も、ヨーグルトもだめだ。
潔癖な程だ。

だけど、チーズとバターは大丈夫。

でも、肉となると、わずかな肉片も見逃さない。
パパは一切の肉を食べない。
小さいときから
パパは肉を食べているのを見たことがない。

だから、大人になるまで
わたしは焼き肉を外で食べたことがなかった。
無論、タン塩から網に乗せることも知らなかったし、
とにかく、内臓系の種類なんて
全くおぞましい食べ物としてしか
思い描くことができなかったのだ。

しかし、
今日、とても旨い焼き肉をごちそうになった。
派遣先の社長は美味しいモノを
いつもごちそうしてくださる。
私の中の、ステキな大人の男性の定義は、
おいしいものをサラッとごちそうしてくれるひとだ。
サラッとおいしいもの。
がポイントだ。
下心が丸見えでも興ざめだし(大体そういう人が連れていってくれるお店はあんまりよくない)、第一に食べることに強く興味を持っていない人でないと、本当にぐっとくる店は見つけられないものだ。
今日のお店は店員の態度も感じがよかったし、なんんといっても肉が旨い。(高いけど)もしかしたら、始めて「お肉っておいしいなぁ〜」としみじみおもった。
黒タンの刺身にはキャビアが乗っかっていたし、味噌漬けの鶏モモも、黒豚を半分レアなまま、塩で、ユッケ石焼きビビンバも美味しかったなあ。ビールが旨い旨い。
プリンが有名な焼き肉やさんです。名古屋在住の方はわかったかな?

プリンを頼む時の私の顔が
今日一番の最高の笑顔だったねと笑われた。
肉に夢中になっていたら
花粉症も治っていた。
(外にでたら治ってたけど)

ごはんを食べに行くといつもみんな必ず褒めてくれる。
「本当にニコニコ幸せそうに食べるね」と。
そういわれてみれば、
唯一の私の特技かもしれない。
好き嫌いはないし、
第一、お料理を残すことが
何よりも嫌いだ。
どんなものでもキレイに残さずにいただく。
どんな時も。
じゃないと、ごちそうしてくれる人にも
お料理を作った人にも、
素材にも
とても失礼な気がする。
食いしん坊なこともあるけど。

美味しいお肉は胸焼けもしないんだね。
うふ〜。
幸せ〜。
生きているのは全く素晴らしいね。

わたしに身を呈して幸せをくれた
ぶたさん、うしさん、とりさん。
ありがとう。
あなたたちの命を無駄にはしないよ。
素晴らしい仕事をありがとう。
大人の男の人は優しいね。
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by 1egg2min | 2005-03-09 00:05 | FOODS

よるをまもるやせっぽっちでめがねをかけた守宮。

「見て、今日は細い三日月だよ」
とちいさな声でつぶやく。
声は夜の街へ
細い
とても細い線になって
闇へと吸い込まれる。

「まだ裸足では寒いねえ。」

「でも、ほら、もう春の匂いがする。」

春は乱視みたいに
夜の輪郭を甘くする。

冬の夜の、あの感じ。
輪郭がシャープで
ツンとした
あの感じが
とてもいとしい。

ビールを片手に裸足で出たベランダ。
「やっぱり、まだ寒いよ」といいながら
部屋のなかにそそくさと退散。

いつのまにか、習慣になってしまったこの癖。
誰もいない部屋、
街の真ん中、
夕日がピンク色に染まる黄昏、
思いがけず見上げた冬の星、
夏の星、
美味しくできた料理を食べて
ニコリとした瞬間、
温泉で「ふう〜」っと天井を仰いだ時、

「見て見て」と
わたしは話しかける。

言葉は行き場を持たないから
所在なさげに
湯気の中や、
夜の闇に
消えていく。

ひとに話したことは勿論ない。
だって、
やばいじゃん。
そんなの。
痛いし。
痛すぎるし。
というか、
我ながら
ちょっと引いちゃうし。
まさか、

すっかりフラれて
3年も時が過ぎた恋人に
話しかけていますなんてさ。

キラキラしたものや、
思わず、ハッと美しい月や、
美味しいものや、
いとしい瞬間に遭遇すると、
神経が脳に信号を伝えて、
瞬時に演算が始まって、
過去や経験と照らし合わせが行われて
冷静な分析が行われるスピードより
ううんと早いスピードで、
「彼に伝えたい」と
答えがはじき出される。

この愛しさを
早く彼に伝えたいと。

どうしてなのか
よくわからない。
でも、
切実に
思うのだ。

世界のこの儚い美しさを
自分が今、発見した
この瞬間を
はやく
彼に伝えなきゃって。
思うのだ。
消える前に
共有したい。
と。

28年の人生の
たった2年半。
その内、遭っていた時間なんて
たかが半年ぐらいの、
幼い恋を
共有したというだけの男の子。

なのに、
どうしてだろう。
どうして
消えてくれないのだろう。
愛しくて
愛しくて
憎しみなんて
どんなに探しても
見つからない。

彼の心を失ってから
ほんとうに欲しいものなんてなにもない。
空虚なばかりだけれど
それでも、前に進めと
世界は言う。
もし、ひとつ願いを叶えてくれるなら
「永遠」を下さいと
お願いする。
何もいらないから
ただ
「永遠」を。

愛しいものは
指の間からこぼれおちて
あわてて
かき集めようとしたときには
もう、
ての届かない場所にある。
ちゃんと
存在して
呼吸して
温かくて
同じ匂いをしているのに
次の瞬間には
もう、ふれることもできない。

手の届かない場所に行った
愛しいひとは
振り向くことなく、
別の時間を生きて
また誰かに恋をして
子供ができて
そして
知らない人生を生きて
死んでいく。

ただ、恋が終わっただけ。
ささいな
幼い恋が
ありきたりな理由で
終わった。
それだけ。

でも、
愛しいひとが
隣で笑っていてくれない人生は
なんとも心許ない。

細い月のような目をしていて
唇と背中の筋肉がとても綺麗なかたちで
犬に顔を嘗められても
ムツゴロウさんみたいに
ずっと、ただ、嫌がりもせずにニコニコと嘗められていた。
彼に愛されている自分は
なんだか
子犬みたいに
いとしい生き物になったような気がした。
おっぱいも
目も鼻も口も
髪も足も
まあるくて柔らかい
上等な生き物になったような
そんな気がしていた。

幸福の真ん中ですら
セックスをして眠って
夜の真ん中でひとりぼっちで目が覚めて
無防備に
隣で眠る顔を見ていると
いつも涙がでた。
「いつかきっと失ってしまう日」を思って
天井を見上げて
声を殺して泣いていた。
あの苦しさを思えば
一人の今の方が
すこし楽なのかもしれない。
失うべきものは
なにもない。

大人になっても
ビールは苦い。
でも、
旨いのだ。

苦い恋は
ビールのつまみにして
一気に飲み干す。
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by 1egg2min | 2005-03-08 00:44 | TEXT