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彼のファムファタルのために作戦は深夜。

10代の頃。
わたしは彼のファムファタルだった。
少なくとも。
たぶん、あのころは。

10年経った今は
彼はわたしの男友達。
というか、
今では
本当に大好きだったひとりをのぞいて、
昔の恋人だったひとは友達になった。

背が高くてひょろひょろだった彼も
いつのまにか
すっかり男のひとに変わった。
前には飲めなかったお酒を
それでも
真っ赤になりながら
飲む。

彼のプロポーズの作戦を
私が練りながら
「もし彼女が車にひかれそうになったら身代わりでひかれられる?」
と聞くと
「うん。できる」
と答える。
「昔はわたしのことも助けてくれるって言ってたのにね」と笑って言うと
「今は無理。助けられない」
と真顔で答える。
そして私は
「車の方を自分ではね飛ばして破壊してやるから助けてくれなくていいよ。」
と笑って憎まれ口をたたく。

そして
ずっとずっと忘れられなかった恋人が
連絡をとっても、返事がないのはどういう気持なのかな?と聞くと
「嫌なんだよ。すごくキライなんじゃない。」
「それか無関心。無関心よりもキライな方がいいじゃんまだ。」
とクールに言い放つ。
全く冷たい男だ。

でも、わたしは勘違いしていたのかもしれない。
都合のいいように。
連絡をとらないのは
中途半端に期待を持たせてはいけないという彼の優しさなのだと
勝手に思いこんでいた。
でも、
彼の言うように
本当にわたしのことが、
共有した時間の全てが
全部キライで、捨てたい過去だとしたら
うざい。
わたしという存在全てが
このうえなく
ウザッたかったのかもしれない。

ごめん。
消したかったよね。
キライなんだもんね。
2年半も
ずっと好きなままでごめん。

もう、二度と口にしないと心に決めた。
愛しい想い出はすべて
誰か脳から消してよ。

すっかり酔って
ごろんと眠そうな彼に
「がんばれー」とエールを送って
仕事のまつ部屋へ帰る。

きっと
私の作戦は成功して
彼は結婚をするだろう。
こうやって
どんどんと
わたしはひとりになるね。

朝起きたら寒さで震えていて
もう
冬の匂いが
部屋にたちこめていた。

ココアでもいれよう。
私の作戦がうまくいったら
何か旨いものでもおごってもらわなきゃ。
がんばれー。
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by 1egg2min | 2004-09-27 16:15 | TEXT

歯医者さんが大好きですがあなたではございません。

6色の色えんぴつならぬ、6色シャープペン。
ノック?部分が「歯」の形でね、
芯もちゃんと色になっているの。
歯医者さんから誕生日のお祝いに
プレゼントしていただいた。
小学校ではシャープペンは禁止されていた
まだ、珍しかった頃の話。

その時から、
いいや、そのずっと前から
性質として
歯医者さんがだいすきなのだ。
保育園生のちっちゃな頃から。
いまもずうっとね。

クラシックが流れていて、
薬品の匂いがして
眩しいオレンジの光
ひんやりとしていて
受付に絵本。

昔、出っ歯の疑い(ママが極度の出っ歯であったが、現在は差し歯なのでもうない)
をかなり心配したママによって
毎月のように歯科に通わされていた。
そんな経過もあったが
ややでっぱっているが極度の出っ歯ではないので
結局、歯列矯正はまのがれた。

いつもあの椅子に座ったとたん
うっとりと眠くなり
口を開けたまま眠り
「終わりましたよ〜起きてね」という
歯医者さんの声で起きる。
そんな子供でした。

最近、なんだか奥歯がずんずんとするので
先月オープンした近所の歯医者に行ってみた。
最新のレントゲンシステム、痛くない人肌の温度をゆっくり注入するエアガンみたいな麻酔、神経を抜くのもレーザーみたいな機械で昔みたいに、キリキリと痛いこともない。なんとも進化したものね。
歯を削られながら、
歯医者嫌いはこの「キーンカリカリ」という音が駄目なんだろうなあ。
私には面白いリズムに聞こえるんだけれど。
「キーンカリカリ」が
「ピヨピヨ」とか
「ポヨンポヨン」だったら
きっと痛くないかもねえ
なんて考えてたら
あっという間に終了。

若い歯医者さんが
「痛くないですからね。痛くしませんよ。すぐ終わりますからねえ」と
(今年28歳になるような私に)
子供をあやす口調で繰り返し言うものですから

「私、歯医者さんが大好きなんです。だから痛いのも大丈夫ですよ」と
ニコニコ答えると、

ポッとその先生の顔が赤らんでうつむいて照れ笑いした後、
「えっ?痛くした方がいいんですか」と
意味ありげの口調で聞き返された。

ハッとしたが、時はすでに遅し。

「歯医者さんが大好きなんです。」イコール
「歯医者さん(人物・あなたを含む)が大好きです。」という意味になり、

「痛いのも大丈夫ですよ」イコール
「痛いの好きなの!なるべく痛くしてね(ハート)」

という「歯医者さん狙いのM女」的発言に間違われたよう。

「痛いのは嫌いですので、できれば痛くない方で...。」
とやんわりとM女を否定しつつ、
「歯医者が大好きですがあなたではございません!」と
心の中で絶叫。

歯医者さんは相変わらず大好きだけれど
医療費は極貧の身に染み渡り、
治療よりもずっと痛い。
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by 1egg2min | 2004-09-19 16:09 | TEXT

青いしゃぶしゃぶ。空にビフテキ。

赤福かき氷。松阪牛の牛鍋。ふわふわの穴子の握り。秋刀魚、赤貝、えんがわ、カニ味噌、渡りカニのカニ汁。

祭り囃子。招き猫の獅子舞(猫舞?)
空にビフテキ。
露天風呂。
アウトレット。

9ヶ月と18日遅れの初詣。
そう、
野次さん喜多さんも
目指すは
伊勢神宮。
だいすきな
おかげ横町。

女3人のぶらりドライブ。
自分で運転して行くのは初めてで、
私も一丁前の大人になったものです。

晴れ女の私の行く道はどこまでも青く、
おしゃべり果てしなく
裸の彼女たちのおっぱいを眺めながら
終わってしまった夏を偲ぶ
遊園地の花火に
大声で「ちょうちょちょうちょー!うわあああ。キレー!」などと
叫びながら

1日というのは過ごし方次第で
こんなにも長くて楽しくて愛しいのだ。

通りゆく季節を
毒を吐き出す、キラキラ美しい四日市の夜景を
いくつかの街を
海を
彼岸花を
通り過ぎ

「(男の子と)デートしてえええええええええええええ」
「(男の子と)手とかつなぎてえええええええええええ」と
切実に愛を叫ぶ
わたしと彼女。

あまてらす 様
頼みます。
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by 1egg2min | 2004-09-19 11:28 | FOODS

あなたのいない世界でずっとあなたが来るのを待っていたんだよ。

うっかり
セカチューこと世界の中心で愛を叫ぶの最終回を観てしまった。

あの本を手に取ったのは
ブームになるずっとずっと前。
本屋の片隅に置かれたあの本をなんとなく買った。
まだ、柴咲コウの帯もついていなかったような気がする。

家族の重大な問題を抱えていて
大切だった恋人にも逃げられ
のちに、
終わらない夜の中にいってしまった
弟にあげることになって
私にとっては苦い苦い想い出の本。
こんなにブームになる本だと思わなかったけど。
わたしたち家族にとって意味を持つ本。
東京まで何度も通った
雨の中野のあの道を思い出す。
悔しくて
情けなくて
しゃがんで泣いていた階段も。

夕方、お昼寝をして起きたら泣いていた。
いつものことだ(笑)
ぼんやりした誰か男の人にしがみついて
なきじゃくって目が覚めた。

大切な人を失って、けれど彼は生きていて、
笑ったり、恋をしたりしているのだろう。
ずっとずっともう2年半もたつのに
泣いて目が覚める。
悲恋は死をもって物語へと美しく転化されるけれど、
生きているのはとてもリアルで残酷だ。

この前、大好きだったあの人が夢にでてきた。
何にもなくまだ、仲良しだった頃みたいな無邪気な顔をして
寝ころがっていた私の上にふざけて乗ってキスをした。
「ひとりにしてごめんね」と屈託なく笑った。

笑ったまま幸福な気持ちで目が覚めて、
朝なのに
思わず泣いてしまった。
彼の重さや、手や髪の感触や、吐く息や、匂いが
あんまりにも生々しく優しかったから。

でも、
もう本当は思い出せないの。
彼の重さも、手や髪の感触も、吐く息も、匂いも。

ただ、
願っても、
大事に大事にしても
頑張っても
決して
手に入らないものが
この世界にはあることを知った。
それは私の人生にとって
最大の出来事。

痛い。
痛い。


心が潰れるような痛み。

その痛みを乗り越える時、
きっと前よりううんと
次に出会う大切なひとに
優しくできると
思いながら
3回目の彼のいない秋が
やってきてしまった。
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by 1egg2min | 2004-09-10 23:42 | BOOKS

めいっぱい十分に不思議ちゃん。

その昔、絵を描いていた。
きっと自分はイラストレーターにでもなって、
ぷぷぷ〜っと楽しく暮らす大人になるのね!
とぼんやりと思っていた。
まさか、この年で自分の力で
自分の夢を叶えるためとはいえ、
夜の蝶になるとは思うわけもなく。
ぷぷぷ〜っと楽しく暮らす大人にはなれたけれども。
自分の空間を構築できるまであと2年。
ストイックな環境で自分を試す時。

あきらかにバックボーンの異なる人種が夜に彷徨っている。
教祖、親分さん、よくわからない先生、社長に会長、元やんちゃ、ママ、よくわからないおじさん、ノリのよい酒焼けした可愛いおねえさん。
ぐちゃぐちゃのそれぞれの人生が集結して、ひとつの空間、ひとつの夜を共有する不思議。あきらかに、そう、あきらかに場違い。あきらかに、私だけかなりの不思議ちゃんキャラである。タイムトリップした原始人みたい。ぷぷぷ〜だ。しかも、華もない。そして、もはや年齢でちやほやされる年ではない。話術もない。タバコも吸わない。歌わない。面白い小話ひとつもできない。声もちいさい。茶髪ではない。
でも、人間を観ているだけで小説を何本も書けそうにドラマチックである。
そして、「偏見」という名の差別的な感情は
しゃぼん玉のように消えていく。
浪人までして大学に二つも行って、デザインにかぶれて、
何となくこれよくな〜いみたいな感じ?の横文字の世界で
そんな杓子定規で世界に線引きしていたじぶんの屈折した世界観。
酒と歌の前ではただの使えない粗大ゴミ。

でも、ひとつだけリアルなこと。
女である以上、美しいに越したことはない。
美人の前で、美人というだけでは不愉快な気分にはならない。
自分がいかに今まで、美に対して無頓着過ぎたかを痛感する。
学歴とか、自分の仕事とか、特技とか、そんな説明を抜きにしたって
美しい人は、そこにいるだけで何にもなくても人をうっとりさせる。
なくてもいいけど、あったらもっといい。
努力でなれるなら、していないのは怠慢だった。
話も面白くなければつまんないけれど。
ひとを無条件にうっとり幸福にする後光でも放ちたい。

例えば、腕に残る根性焼きの跡。ただ、「痛い人」と切り捨てることもできるけれど、なんだか勲章のように思う時がある。その人が抱えてきた人生の、乗り越えてきた過去の、愛しい時間がそこにある。自分とは遙か遠い世界で、笑ったり、怖い思いをしたり、悲しかったりする、この人の過去は愛おしいと思う。彼らの消したい過去であっても。
そう、思える前提は、彼らが通り過ぎる物語であるからだと知っている私こそ、
究極の偏見のかたまりだ。
しかし、そうである以上、真摯に思うのは
このただ一つの夜を幸福に過ごしてもらいたいと思う。
わたしも。あなたも。
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by 1egg2min | 2004-09-08 00:47 | TEXT

この人の優しさは本能だ。「ヴァイブレーター」

自分の内なる声がうるさい。
ねえ、ねえ、ねえって。
その気持ち、すごくわかる。

赤坂真理原作の「ヴァイブレーター」の映画化で
今の自分にはまっていて痛い。
食べ吐きや、アルコール依存とか、そんなありがちな痛い設定は置いておいて、
単純に、相手役の大森南朋がよい。寺島しのぶの暗さも。
わたしは昔からこの手に弱いのだ。
「ベティ・ブルー」も、「愛のコリーダ」もそう。
気丈で、情が深くて、エキセントリックで、弱くて、愛しくてしかたなくて、それ故、混乱してしまう女と、それをただ、静かに受け入れる男。
でも、結局、救えない。待っているのは破綻してしまう愛情。
だけど、この映画は
「少しだけ自分がいいものになったような気がする」
で終わる潔さが好きだ。
結局、戻ってくる。
リアルなカサカサして、うるさいまんまの日常に。
自分の声から逃げることはできない。
逃がして貰うこともできない。

知らない男の人でも、くっついていると温かい。
でも、見極めないと行けない。
ちゃんと、その優しさは本能であることを。
最近まで、それができなかった。
だからずっと苦しかったな。

温かい。誰かにギュウと抱きしめてもらうと温かい。
自分が小さくていたいげな、柔らかい生き物になったような
いい気分。トゲトゲな皮膚がまあるくなっていく感じ。

大好きなひとがいなくなってこの2年半。
一緒にお風呂入りたいな。
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by 1egg2min | 2004-09-07 12:35 | CINEMA

隣の庭の、柘榴と青い夏みかん。

タイフーンが秋をぐいぐいと連れてきました。
だらんと暑い夏はあっという間に過ぎ去り、
隣の庭には、柘榴の実と夏みかん。

ネット環境がダウンしていたので
やれやれと思っていたら
2ヶ月も更新をさぼってしまった。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

隣の部屋の若者が
いけない植物を育てているのを発見してしまったり、
夜の蝶になったり、
深夜の海でスイカ割りをしたり、
お洗濯したり、
大好きな沖縄の友達に赤ちゃんが生まれたり、
夏フェスに行ったり、

ゆるりと無音で
季節は動いていて

そして、芋です。栗です。

秋は炊き込みご飯に凝る予定。
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by 1egg2min | 2004-09-07 11:47 | TEXT